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1.固液界面とは 

 

金属電極と電解質溶液などの固液界面に吸着した分子やイオンは、一般に電極との電子的な相互作用により、固有の分子構造や配向性、電子状態を持つ。また、電極電位(Fermi準位)の制御により、吸着/脱離、あるいは酸化/還元反応を起こす場合がある。その分子レベルでの詳細な過程は、電気化学的な応答だけでなく、電極側化学種の構造や電子状態、配向性などを解析するX線吸収・散乱(XAFS, XANE等)、光電子分光、振動分光、質量分析など種々の分析法と複合することにより、初めて明らかになる。原理的に電子プローブは、真空中でのみ利用可能であるが、最近制限つきであるが、反応条件下(オペランド)でTEMやXPSなどの電子プローブを用いることが可能になってきた[1]。これに対して、光をプローブとする分析法では、感度と空間分解能の問題を別にすると、固/気・固/液界面に、幅広く適用可能である(図➋-1)。特に、化学種の状態について詳しい情報を与える赤外吸収とラマン散乱分光がある[2-4]。これらの振動分光法は、化学種の内部振動 (3次元空間での分子を構成するN個の原子の運動の自由度3Nから、分子全体の並進3個、回転3個の自由度を差し引いた残りが振動の自由度で、非直線分子では3N-6個の分子内結合の伸び縮み、結合角が変化する振動, N:原子数)のエネルギーと遷移強度を与えるもので、固体表面に吸着した化学種の内部構造や、配向性、基板や溶媒との相互作用により少なからず変化する。溶液中のバルク状態との比較により、化学種の同定だけではなく吸着状態を(定量)分析できる。

固液界面とは

参考文献

(1) 例えば、永村直佳、堀場弘司、尾嶋正治、表面科学, 2016, 37, 25-30.

(2) 中川一朗、「振動分光法」, 学会出版センター1990.

(3) a)濱口宏夫、平川暁子、「ラマン分光法」, 学会出版センター 1998. b) 原田義也, 「量子化学 (上・下)」, 裳華房(2007).

(4) 第5版実験化学講座、基礎編Ⅲ:物理化学 下、丸善 2003.

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